<ヘラクレスの栄光3>

2001・10・25

 ファミコン時代から続く、定番RPGシリーズの三作目です。ファミコンの時代の1・2に関しては、良くも悪くも普通のRPGといった作りで、表立った話題にはならなかったんですが、このスーパーファミコンでリリースされた3で一気に評価が高まりました。
 このゲームは、特にストーリー面での評価が非常に高いですが、それ以外にも個人的にいろいろと思うところがありました。

 とりあえずストーリーについて語りましょうか。わたしは、根っからのシステム派のゲーマーでして、通例ストーリーは二の次といった感じのプレイしかしないんですが、このゲームは違いました。ストーリー自体も非常にいいんですが、それ以上にゲームならではのストーリーといった側面が見られ、実際にゲームをプレイして、自分の手で主人公を動かして、初めてストーリーを深く味わえるような構造になっています。したがって、このゲームのストーリーを小説化したり映画化したりしても、ゲームほどの感動は味わえないと思います。ゲームならではのストーリーなのです。
 具体的に説明します。まず、主人公が記憶喪失という設定がポイントです。ゲームが始まった段階で主人公は何一つ覚えていない記憶喪失という設定です。したがって、世界についての知識を何も覚えていない主人公と、同じく世界についての知識を何も知らない初期のプレイヤーとの間の一体感が高まります。「プレイヤーが知らないことを主人公が知っている」という違和感がないわけです。
 このような「主人公が記憶喪失」という設定は他のゲームでもたまに見られます。いずれの場合も、主人公とプレイヤーの一体感を促進するための工夫ですが、この「ヘラクレス」の場合それが最もうまく機能しています。
 そしてストーリーの展開がよい。はじめのうちは実にのんびりとした展開で、「記憶喪失だし、やることもないし、とりあえず旅に出よう」みたいな感じですが(笑)、中盤以降少しずつ展開が加速していって、次第に過去の記憶の謎が解けていき、そしてラストのクライマックスに至る。展開が一定の直線を描いていて、あまりわき道にそれないのがよいのです。
 そして、何と言ってもクライマックスで、主人公の過去の記憶が明かされるところが圧巻です。このイベントで受ける印象は、感動というよりむしろ「衝撃」です。なんでこんな衝撃を受けるかと言うと、このシーンまではあくまでプレイヤーがストーリーを外側から見る立場でしかなかったのが、このイベントで強引にストーリーの当事者にされてしまうことにあります。もう無理矢理プレイヤーを引きずり込むような感じ、でしょうか。 とにかくこの衝撃は一度自分で味わってください。ネタバレになるのでこれ以上は言えません。
 そして、クライマックスでここまで衝撃を味わえるのも、ひとえにゲームとして主人公を自分の手で操作してきたからに他なりません。プレイヤー=主人公という立場だからこそ、この衝撃が味わえる。したがって、このストーリーを小説や映画の形で提供してもここまでの面白さは得られないでしょう。まさにゲームならではのストーリーなのです。


 さて、このようにストーリーばかりが評価が高いゲームなんですが、それ以外にも結構ひきつける要素があります。
 まず、戦闘以外でも細かいところでシステム上の工夫があるのがいいです。例えば、このゲームの主人公は不死身で高いところから落ちても死なないという設定ですが、これがシステムにも取り入れられていて、フィールドやダンジョンの段差から落ちてもそのまま先に進めるようになっています。ダンジョンではその段差自体がひとつの謎解きになっているケースもあり、そうでなくても段差を飛び降りることでうまくショートカットできる場面があると結構うれしい。ちょっとしたアイデア的なシステムですが、やってみると中々面白いものです。
 「神殿巡りをして魔法を覚える」というシステムもいいです。フィールドに点在する神殿内部の泉に浸かることで魔法を覚える、という設定なのですが、これら神殿は移動の魔法では行けないため、はるばる歩いていくことになります。しかも、新しい仲間が入るたびにそうする必要があります。。一見面倒そうですが、わたしにとっては、むしろ各地をめぐって旅をしているという感じで心地よかった。これもちょっとしたアイデア的な要素ですが、ゲーム内で優れたアクセントになっていました。
 つまり、このようなちょっとした工夫・アイデア的な要素がゲーム全体に散りばめられているのです。これはヘラクレスシリーズ全体に言えることで、ある種このシリーズの作りこみの方向性を象徴しています。戦闘とかストーリーとか、個々の部分を作りこむというよりは、ゲームの全体をまんべんなく作りこんでいく。この作りこみの方向性は非常に気に入っています。

 システム以外の諸設定にもそれは言えます。文化圏ごとに建物の構造や町のイメージが統一されていたり、「神話事典」というゲーム中の用語集的なアイテムがあったり、仲間キャラのレイオンが日記をつけてたり(笑)、こういった独特の作りこみは他のRPGではあまり見られないような気がします。ゲーム全体でさまざまな側面から楽しめるのが魅力ですかね。

 肝心の戦闘システム自体はオーソドックスなターン性です。とくに目新しい要素は無く、このあたりがストーリー以外の評価を落としている原因かと思われます。ただ、バランスは非常にシビアです。自分のレベルに合わせて敵も強くなるというシステムがその一因で、レベルを上げてもなかなか戦闘が楽になりません(*ただし、FF8とは違って敵の強さに上限はあります。レベル1の敵が延々レベル99までついてくるわけではありません)。その分戦闘は真剣に考えないと抜けられないので、これくらいのバランスが自分にとってはちょうどよかったのです。なにしろラストダンジョンでは、5人パーティーのうち戦闘のたびに2人か3人が死ぬという凄まじさですから(戦闘が終わるたびに生き返らせて先に進むわけです)。


 このように、このゲームは戦闘のやりこみ要素には乏しいが、ストーリーとゲーム全体にわたる各種作りこみが魅力と言えるかと思います。わたしは、今の戦闘偏重のRPGよりも、こういったタイプのRPGのほうが好きですが、最近はこういった方向性のRPGが少なくなったように感じるのが残念なところです。


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